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先生の名は、九代涼子という。
僕は、このやる気なさげな先生が好きだ。
どうして好きなのかというと、特に理由も原因もない。
ただ強いて言うなら、雰囲気が好きだ、ということになるのだろうか。
僕や僕の周囲の人間とは違う雰囲気に惹かれたのだろう。
この先生の周りでは少しだけ違う時間が流れている、そんな気がする。
ごく当たり前の時間の流れの中で生きていて、多分これからもそう生きて
いくだろう僕にとって、その雰囲気はちょっとした憧れだった。
もっとも僕とは違って先生は大人なんだから、雰囲気が違っていて
当たり前なのかも知れない。
だから客観的な立場とやらから見れば、僕の気持ちは、美人の先生に
憧れる教え子、というありふれたものなんだろう。
まあ、多分それは正解だろう。
ただしその見解は、僕の気持ちがありふれたものである、ということを
説明しているだけでしかない。
僕と先生の関係というのは、決してありふれたものではない……と思う。
僕たちには、他人には言えない秘密がある。
それは――
小賢しい僕ら、先回りしがちな僕らのためのイージー・リスニング。
放課後、学校の片隅で奏でられる、没落貴族のポエトリー・リーディング。
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