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Story 00 : すべての始まりの前に
俺が母校でもなんでもないこの学園に教育実習に来ることになったのには、理由がある。
いたって単純、「定員オーバー」。
こんな時、なまじよく知っている相手は無情だ。俺の高校時代の社会科担当であり、3年の時の担任でもあった山科先生(そういえば、当時は「山科」とか「山セン」とか呼んでいたけど、いざ自分がその立場となると言えないよなぁ。すみませんでした)は、ご自慢の口ヒゲをなでながら、「まあ、なんとかなるだろう」と、なんの解決にもならない慰めで締めくくった。
実際、なんとかはなった。面倒をみてくれるという学校はみつかった。
しかも家から2駅の好条件。母校だって、もっと遠い。
でも……これはないよなぁ。
門を見上げ、俺はこのまま逃げ帰りたい気分になってくる。
クラシックな煉瓦造りの高い塀に沿って歩いていくと、しゃれたデザインの鉄製の門。その向こうには背の高い木々が影を落とす小径が続いている。そして合間から見え隠れするのは十字架と白亜の校舎だった。
端的に言うと外国の名門校のような風情。うちの大学だって私立だから、それなりに金のかかってそうな建物なんだけど、ここと比べると旧家と成金趣味のような落差を感じる。しかもこの印象は間違ってないらしく、もらったパンフレットには、横文字名前の理事長の写真が載っていた。
大丈夫か、俺?
自分に問いかけてみても、こころもとない返事が返ってくるばかり。
しかも今回は、あたりまえのように一緒にいた幼馴染の純也もいない。正真正銘の一人っきりだ。
右手でそっと、校章と校名が刻印されたプレートにふれてみる。冷たい感触に、気が引き締まる思いがする。
これが今日から二週間、俺がお世話になる聖心学園。
考えてどうなるものでもないのなら、行くしかないよな。――ひとつ溜息をつくと、まっすぐ顔をあげた。
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