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"愛する人は、あなただけ――。" 遠く岩壁の上に、村から孤立した城がそびえたつ。 「黒月(ヴァール)の城」と呼ばれるそれは、昨年まで国の上皇が隠居する城だった。 今はあるじを亡くし、皇王の命により代理人が治めている。 主人公は、修道院で静かに暮らす「聖女(イスタ)」。 ひと月前、ある大切な儀式をしくじり3年分の記憶を無くしている。 十四才から十七才まで――自分がどこで何をしていたか、 彼女は何も覚えていない。 そんな時、一通の手紙が届いた。 『イスタよ、城へお戻り下さい。 黒い月があなたをお待ちです――』 儀式の失敗以来、修道院にすら居場所のなくなった主人公は、旅に出る決意をする。 「黒い月が待っている……」 その言葉に、なぜか胸をつらぬく哀しい痛みを覚えながら。

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