

同一世界観

#745
「おはようございます、和久津さま。キスしてよろしいですか?」 「だめ」 これが三日前。 平穏無事な朝、同級生とのたわいもない日常。 「いくわよ、いいわね、気合いを入れて!」 「物事は精神論より現実主義で!」 その三日後。 燃えるビルの屋上からダイブして、都市伝説の黒いライダーに追いかけられた。 運命はいつだって問答無用にやってくる。自分たちをお構いなしに自分勝手に巡っていく。 皆元るいは、家なし子だった。 花城花鶏は、奪われたものを取り返すためにやってきた。 鳴滝こよりは、消えた婚約者を探していた。 茅場茜子は、父の不始末のとばっちりを受けていた。 白鞘伊代は、ひとりぼっちだった。 そして。 猫かぶりの優等生、和久津智は断末魔だった。 智には痣がある。宿命のような運命のような、烙印めいた小さな痣だ。 その痣は、きっと昔から、ろくでもない先行きを予告していたのだろう。 死んだ母から手紙が届いて以来、地雷原に迷い込んだように引きも切らずトラブルが押しかける。 宿命のように運命のように、涙目の智が出会った少女たちの身体には、智と同じ形の痣があった。 言語道断な呪われた青春と対峙するために、一心でもなく同体でもない、六人の少女が同盟を結ぶ。 「つまり、これは同盟だ。破られない契約、裏切られない誓約、あるいは互いを縛る制約でもある。 僕たちは口約束をかわす、指切りをする、サインを交換し、血判状に徴を押して、黒い羊皮紙に血のインクでしたためる」 「一人で戦えないから力を合わせる。一本の矢が折れるなら五本六本と束ねてしまえばいい。 利害の一致だ。利用の関係だ。気に入らないところに目をつぶり、相手の秀でている部分の力を借りる。 誰かの失敗をフォローして、自分の勝ち得たものを分け与える」 「誰かのためじゃなく自分のために、自身のために」 「僕たちはひとつの〝群れ〟になる。群れはお互いを守るためのものなんだ」 いつか来る平穏無事な日々を夢見て、全身全霊で疾走するでこぼこだらけの少女たちは、いつしか固い絆で結ばれていく。 けれど。 和久津智は仲間にもいえない秘密を隠し持っていた。 彼女は「男の子」だったのだ――。

#1029
「いこう! 今から!」 小さな指で裏山の向こうを差す思いつき。 その夏、ささやかな冒険の終わりに辿り着いた街で。 みんなと見上げた夜の空に、とてもキレイな二つの月を見た。 「なんかチーム名欲しいな」 「ヒーローみたいなヤツがいい!」 「探検戦隊・カエレンジャー!!」 「ただの迷子じゃねーか!!」 それは、まだ彼らが小さかった頃のお話。 周りの大人に黙って、自分たちだけで飛び出した。 遠くの知らない街へ行くだけの、他愛もないものだけど。 子供だった彼らにとって、それは何もかもが知らないことばかりの、かけがえのない大冒険だった。 ―――冒険は終わる。 それぞれの理由で離ればなれになる幼なじみたち。 楽しかった頃の記憶を思い返すこともなくなった、数年後の夏のある日。 管野孝(かんの こう)は、再び二つの月を見る。 自分以外には誰にも見えない、幻のような月。 その原因を探るため、再び足を踏み入れた想い出の街で、孝は幼なじみたちと再会する。 彼女たちも “二つの月” を目撃し、それぞれの場所から集まってきたのだが、やっぱり流れた時間の分だけ、距離は遠くなっていた。 そして月の謎を追いかけて辿り着いた奇妙な樹の下で、彼らは、自分の願いを叶えてくれる力を持った魔法のような道具を手に入れる――― 二つの月の微笑む街角には、口から口へ囁かれる都市伝説の数々がある。 不思議な樹、 空に咲く二つの月、 道具、 夜道を横切る3メートルのウサギ、 アクエンアテン王のチェス盤、 謎の美少女剣士――― “道具” のもたらす “魔法の力” を試しはじめた孝たちと、街で起こる奇妙な出来事が幾重にも交差する時。 孝の道具 “グレイスワンダー” が何者かに盗まれてしまう。 使い方を誤れば、大きな災いにもなる “道具”。 責任を感じた孝は “グレイスワンダー” を取り戻すことを誓う。 かつてのように集まった幼なじみたちと、真新しい地図を広げて。 あの日終わった冒険の続きをはじめる――――






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